中国株には色々な企業があります。中には、日本では名前を聞いたことがない企業や日本ではあまり見かけない業界や企業がたくさんあります。
そんな中国株が一番有名になったのは、IT企業の躍進だと思います。
豊富な人口を背景に利用者数や売上を伸ばしていきました。IT企業が扱う情報はビックデータと呼ばれ、沢山の情報が集まれば集まるほど様々なシミュレーションが出来たり統計が取れたりとメリットが大きいため、中国のような巨大な人口がある国には有利に働きます。
今回は、そんな中国での成長産業であるIT業界をみていきましょう。
特殊なインターネット環境
中国は日本などの資本主義社会とは違って共産主義国家となります。共産党が国を支配しており、個人の権利よりも国(党)の権利の方が強い事から個人の自由や権利が制限されている部分があります。
特にIT分野においては、インターネットの閲覧等による制限などがあり、個人が自由に使用できる環境にはなっていません。
中国の法律に従って、中国政府・地方行政・インターネットプロバイダー・IT企業などによってネット環境などの閲覧が行われており、インターネットポリスなどによって政府にとって不都合な情報や批判などは自動的に削除されたり閲覧が禁止されていりしています。
中国でIT事業するためには、これらの行為についてIT企業側も同意をする必要があり、グーグルやフェイスブックなどのネット検索企業やSNS企業などは自由で公平な自社サービスが提供できないという事で相次いで撤退しています。
えっ、グーグルやフェイスブックは使えないの?
GoogleやFacebook、YouTube、Twitter、LINE、Instagramなどの欧米のサービスは使えないんです
そのため中国では中国固有のIT企業が台頭するようになり、そして中国独自の発展を続けていき、豊富な人口があるゆえに中国だけでも巨大な売上と利益を確保できるようになっています。そして、そんな中で生まれた中国のIT企業は、グーグルやフェイスブック・アマゾンなどの世界大手企業と肩を並べるほどの世界上位の規模と実力を手に入れるようになっていったのです。
中国独自の企業、サービス
グーグルやフェイスブックが撤退しており、YouTubeやFacebookが使えないのはもちろんの事、TwitterやLINEなどの欧米の企業のサービスは一切使えません。
その代わり、中国企業が運営している同じようなサービスが提供されており、中国においてはそれらのサービスが普及している事で市民の方々は特に問題なく過ごしています。内容やサービスはほとんど同一で運営企業が中国企業だという事だけです。
業種 | 欧米サービス名 | 中国サービス名 |
---|---|---|
検索エンジン | グーグル | 百度(バイドゥ) |
SNS | Facebook、LINE | 微信(We Chat) |
SNS | 微博(Weibo) | |
動画配信サービス | ユーチューブ | 優酷(Youku) |
ECサイト | アマゾン | アリババ |
配車サービス | ウーバー | 滴滴出行(ディディ) |
音楽ストリーミング | Spotify | QQmusic |
世界中の人々が使用しているグーグルやフェイスブック、ツイッター、ユーチューブ、アマゾン、ウーバー、スポティファイなどは中国では使用できず、中国企業が運営している代わりのサービスを利用する事になります。
これらのサービスは中国を中心に利用されているのですが、中国だけでも14億人という膨大な人口があるため、サービス利用者数はグーグルやフェイスブックにも劣らず、最近は中国国内だけでなく東南アジアや欧米にもサービスを展開しているので、更に巨大化しています。
それらの運営企業は、今やグーグルやアマゾンなどと肩を並べるほどの規模に成長しているのです。
中国の巨大IT企業
中国には世界的にも巨大な規模を誇るIT企業がいくつかあります。その中でも特に有名な3社を紹介したいと思います。
世界最大のゲーム企業であり中国最大のSNS企業(テンセント)、世界最大の流通取引総額を誇る中国最大のEC企業(アリババ)、中国の検索サイトを独占する企業(バイドゥ)、この3つの企業は中国株に投資をしている人であれば誰でも知っている有名な巨大企業であり、これらの企業に投資をしている人も多いです。
企業の規模の大きさを示す時価総額でみてみると、世界最大の企業は米国のアップルです。そして2位にマイクロソフト、3位にグーグルと世界的にも巨大なIT企業が上位を占めていますが、中国のIT企業も上位に食い込んでおり、テンセントは10位、アリババは24位になっています。ちなみに日本で一番大きな企業であるトヨタが40位なのを考えれば、テンセントやアリババの企業規模の大きさが分かると思います。
テンセント
一般的には「テンセント」と聞いてもほとんどの人が知らない馴染みの薄い企業だと思います。
しかしながら世界的には有名な企業であり、決算発表の時には必ず経済ニュースや日経新聞などにも掲載されています。中国を代表するIT企業であり、世界最大のゲーム企業かつ中国最大のSNS企業です。
テンセントは中国最大のSNSを運営している企業であり、そのSNSである微信(We Chat)の利用者数は13億人にもなります。ほぼすべての中国人が利用しているといっても過言ではないSNSです。日本のライン(LINE)みたいな感じですね。
SNSの圧倒的な利用者数や知名度を背景に、様々なサービスへと誘導していき、収益をあげていく形となっています。SNS、動画配信、音楽配信、スマホ決済サービス、ゲーム事業など中国の方々の娯楽産業を中心に支えている企業となっています。
特にゲーム事業は豊富な資金力をバックに様々なゲーム企業を買収したり出資したりしており、eスポーツの代表格である「リーグ・オブ・レジェンド」の米国ライアットゲームズや、ソフトバンクグループが保有していたフィンランドのスーパーセルの買収だけでなく、「フォートナイト」の米国エピックゲームズ、「PUBG」の韓国ブルーホール(現クラフトン)に出資しています。
テンセントが出資をしているゲーム企業は世界中に180社もあると言われており、世界中のゲームに影響力を及ぼしています。
アリババ
中国最大のECサイトを運営する企業です。世界的に有名なのは米国のアマゾンだと思います。日本でもアマゾンは有名ですよね。中国においてはアリババが最大のEC企業となります。中国版のアマゾンだとイメージすれば分かりやすいと思います。
今後さらに成長していくと言われているインターネットショッピングで中国最大のシェアを占めており、中国のネットショッピングを支えている重要な企業です。ECサイトの規模の大きさを示す流通取引総額(GMV:グロス・マーチャンダイズ・ボリューム)はアマゾンよりもアリババの方が多いです。
アリババはECサイトとしても有名ですが、もう一つ有名なのはクラウド事業です。
世界第4位の規模を誇るクラウド事業であり、もちろん中国最大手のクラウド事業を運営する企業です。クラウド事業も、今後の成長性が見込める産業であり、まだまだ拡大の余地がある前途有望な業界となります。
EC事業・クラウド事業ともに成長性のある事業にて中国最大手に位置している企業がアリババです。
バイドゥ
中国最大の検索エンジンであり、中国版グーグルと言われている企業です。
中国でのアクティブユーザーは6億人となっており、1日の平均検索回数は100億回以上にもなり、中国人の90%はバイドゥを利用しています。
検索エンジンで有名な企業ですが、近年では自動車の自動運転技術(自動運転事業)で有名になっています。
バイドゥが設立した世界最大の自動運転車共同開発企業連合「アポロ計画」には、マイクロソフト・インテル・NVIDIA・ダイムラー・フォード・BYD・トヨタ自動車・本田技研工業など世界有数のIT企業・自動車企業が勢ぞろいしています。
2022年8月には完全無人の自動運転タクシーの商用サービスを武漢市と重慶市で始めています。
レベル4の自動運転車を2023年には市販する予定となっており、自動運転における世界有数の先駆け的な存在の企業となっています。
中国の有名IT企業
中国にはまだまだ世界的なIT企業が多く存在しており、それぞれの業界のトップシェアを誇っている企業があります。
そんな企業の中でも、今後成長していく可能性が高い電気自動車メーカー(BYD)とフードデリバリー企業(美団)、スマホメーカー(シャオミ)を紹介していきたいと思います。
BYD
中国における最大のEVメーカー(電気自動車メーカー)であるBYD。世界でも有数のEVメーカーであり、世界最大のEVメーカーであるテスラに次いで世界第2位のEVメーカーです。
日本ではほとんど無名の自動車メーカーなのですが、電気自動車メーカーとしては世界的に有名であり、あの世界最高の投資家と言われているウォーレン・バフェット氏が出資していたことがある事でも有名でした。
電気自動車だけでなく、ガソリン車やハイブリッド車なども手掛けていましたが、2022年にはガソリン車の生産を終了して電気自動車に重点を置くようになっています。BYDが生産する電気自動車の性能は評価が高く、EVバスなども手掛けていますが、EVバスは日本の沖縄や京都などでもすでに導入されて走っています。
BYDはもともと電池メーカーだったこともあり、EVに使用する電池も自社で生産している事から垂直統合型の生産が可能となっています。このことがBYDにとって他にはない強みとなっています。
美団(メイトゥアン)
食と生活をサポートする企業であり、アプリで様々なサービスを提供している企業です。フードデリバリーや口コミサイト、飲食店予約、ホテル予約、配車サービスなどの事業を行っています。
私達に分かりやすいサービスで置き換えれば、ウーバーイーツや食べログ、ホットペッパー、じゃらん、ウーバーなどを合わせて1つのアプリから利用できるようにしているという感じです。
私達の場合は、それぞれの企業のサイトやアプリを利用しないといけないのですが、中国の美団の場合はこれらを全てを自社で運営しており、1つのアプリで利用できるため非常に利便性がよくて、スーパーアプリとも呼ばれています。
中国の方々の日常生活をサポートしている企業となります。
小米集団(シャオミ)
中国のアップルと呼ばれているスマホメーカーのシャオミ。高機能なスマホながら低価格で提供している新興スマホメーカー。
従来はスマホをメインに販売していましたが、経営を多角化しており現在は総合家電メーカーとして変貌を遂げています。
2021年のスマホの売上高による世界シェアでは、アップル、サムスン電気に次いで世界3位になっており、販売台数ベースでも世界シェアは、サムスン電気、アップルに次いで世界3位になっています。
最近は、EV(電気自動車)にも進出しており、2026年には販売を開始するとアナウンスしています。
スマホやEVなどの今後の必需品を生産している企業となります。
今後も成長性が期待できるIT業界
インターネットやスマホが登場してから私達の生活の利便性は飛躍的に向上しました。家にいながらにしてあらゆる事を調べることができ、様々な物を注文したり、色々な娯楽を堪能したりすることが出来るようになりました。
レンタル店や映画館は減少していき、家で映画やドラマをサブスクなどで見る事がスタンダードとなってきています。
買い物も実店舗で商品を確認してネットで注文するなどの行動変化が現れてきており、リアル店舗がショールームへとなりつつある業界もあります。
ITやAIは今後もますます発展していき、私達の生活も更に便利になっていくでしょう。そして、それらの提供を担っているIT業界は今後も成長していく事が有望視されています。
人口が多く、今後も経済成長が続いていく事が期待されている中国においてIT業界は急ピッチで高成長を続けていく可能性がある業界となります。
そんなIT業界の主力企業に投資をしていく事で高い成長性を取り込むことが出来るかもしれません。
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